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遺産分割で争わないためのポイントと考え方

私が輸入車販売会社に勤務していたときの事です。

ある日、お客様から「自動車の名義変更を頼みたい」とのご要望をいただきました。

その方は、古くから地元で歯科医院を経営する50代後半の男性。

しばらく前に親から譲り受け使っていたが、クルマの名義となっている親が亡くなった、 今後自動車税の納付書が、クルマを使っていない兄弟のところへ届いてしまうので自分の名義に変えたい、

とのことでした。

クルマの名義変更をするためには、新しい所有者となる人の印鑑証明書と保管場所証明書と委任状に併せて、旧所有者の印鑑証明書と譲渡証明書と委任状が必要になります。

ところがそのクルマの持ち主は、すでに亡くなっています。

その場合には旧所有者の相続財産であるため、更に「遺産分割協議書」が必要になります。

それをお客様に伝えたところ、「それはできない」と。

その理由を聞くと、

相続手続きの際に兄弟間で揉めに揉め、いまは一切付き合いをしておらず連絡も取りあっていないから。

とのこと。

しかし名義を変更するには、その兄弟方の実印が押された「遺産分割協議書」がどうしても必要なのです。

それ以外に名義を変える方法はないのか?と問われたので、あるにはあります。と答えました。

その方法は、自動車業界で言われる15条抹消、「永久抹消登録」というものです。

言葉の通り、自動車を永久に抹消(使えなく)するため、解体処理をした証明書が必要になります。

逆に言えば、解体屋で鉄くずにした証明書だけがあればいいので、変更手続きの中で「遺産分割協議書」は必要なくなるのです。

それをお客様に伝えたところ、「兄弟に実印を押すよう頼むくらいなら、その方法の方がよっぽどいい。このクルマを解体処分してください。」と。

そのクルマは、メルセデスベンツ。

クルマ好きの間では名車と呼ばれる、ミディアムクラスW124型のステーションワゴン。

えーっ!ま、まじすかー!

中古車市場では数百万円で流通しているクルマですよー!

現在の名義のまま、乗り続けることはできないんですか?

と何度も考え直すように伝えましたが、

「このクルマが原因で、また兄弟とお金のことを話さなければならないのなら、いっそ無い方がましだ」と。

数日後、私はお客様からクルマを預かり、自動車積載用トラックに載せ解体屋へ持ち込みました。

大きなプレス機で潰されて、見るも無残に小さな鉄くずとなっていくメルセデスベンツ。

自分のクルマでもないのに半泣きで眺めながら、最後にたった一枚の「解体証明書」を受け取って、その足で陸運局へ向かい永久抹消手続きを済ませました。

後日、お客様へ抹消証明書をお届けに伺うと、

「あー、ほっとした。」

と、とても喜んでくださいました。

私は心の中で、半べそかいていましたが。

 

お金の話は揉めやすい

お金のことになると、話が穏やかに進まないことってありますよね。

夫婦間でも喧嘩の理由って、だいたい異性問題かお金のことのどちらかですし。

悲しいことに、お金目当ての犯罪ってどうしても起きてしまいます。

お金の話は揉めやすいんです。

血を分け合った兄弟でさえ、自身に利害関係が及ぶなら尚更のこと。

お金は理性を失わせるほどの力を持っています。

あなたは、お金のことで揉めない自信はありますか?

 

簡単に意見はまとまらない

相続では多かれ少なかれ、誰かが必ず遺産を引き継ぐことになります。

そして引き継ぐ人が複数いる場合は、法律で決められている割合で分けることになっています。

しかし遺言書があった場合には、書かれている遺言通りに分けることになります。

ですから皆が納得してその通りに進めていければ、遺産分割は難なく終わります。

しかしその遺言の内容が一方的で、例えば

「実家の土地と建物は長男に、自営業なので会社の株とお金も後継者である長男に。残りをほかの兄弟で分けるように。」

とか、

遺産は実家の家と土地くらいしかないのに、「すべての財産を兄弟全員で均等に分ける。」

とかだと、ことは単純ではありません。

または遺言書がなく相続が発生し、法律で決められている割合で分けようとしたところ、引き継ぐ人それぞれの考えの相違で分け方に対しての不満が噴出し、意見がまったくまとまらない、などはよくあることです。

どんな場合でも、すべての遺産をきちんと分けて「遺産分割協議書」に相続を受ける全員の実印と自署がないと、名義変更や登記の手続きができません。

このようなトラブルを避けるためには、事前に遺産の分け方について家族間で話し合うことができればいいでしょうね。

また遺す側は、「この財産はお前にあげるからな」などと安易に口約束はしない方がよいでしょう。

言われた側はその時点で自分がもらう気持ちになっていますから、遺産分けの話し合いの中で「それは私に遺すって言ってたよ!」となり、揉め事の火種となるからです。

 

遺産相続は不平等なもの

ちなみに私は、「遺産相続の割合は不平等になる」ものだと思っています。

考えてみれば簡単に分かりますが、1円の差も出ることなく分けることは不可能だからです。

遺産のすべてが現金や預貯金だけで、偶然にも小数点以下が出ない割り方になるのなら別ですが。

そんなことは、まずありません。

偶然にもまったく同じ大きさの土地が人数分あったとしても、利便性や将来性、場所の環境など、必ず価値に差があります。

ですから遺産を円満に分けるには、金銭価値は不平等になるものとわきまえた上で、相続を受ける人の譲り合いの気持ちや、ある程度の妥協は必ず必要だと思います。

 

身内だけで話し合いましょう

そして気を付けるポイントは、家族だけで話し合いをすること。

長男の嫁や長女の婿など、相続を受ける人の配偶者は除外すべきです。

ましてや、親戚のおじさんなどもっての外!

何を言い出すか分かりませんから。

混乱すること必至です。

「先祖代々続いてきた土地を処分するなどけしからん!」

とか言ってきたりして。

長年一緒に暮らしてきた、血を分け合った家族にしか分からないことってあるんです。

他人が入ると、

「ウチがそんな少しかもらえないのはおかしい!」

「分け方が不平等だ!」

などと<争いの火種を起こし、油を注がれてしまいます。

くれぐれも気を付けましょう。

 

争いになるかもしれない場合は?

しかし話し合いはしてみたものの、どうも遺産争いになってしまいそうだ。

という方もいるでしょう。

そのような状況なら、遺言書を書くことを強くお勧めします。

遺産分割の話し合いがまとまらないときは、遺言書に従って分けることになるからです。

記入の仕方に不備がなくきちんとした内容なら、法的拘束力がありますので、遺産争いを収束させられます。

しかし先にも述べたように、あまりに一方的な内容になると、相続は終えても家族の不満は癒えることなく、将来不仲になってしまう可能性もあります。

そんなことにならないように、なぜこの財産を誰々に遺したいのか、といった理由や一言を付け加えるほうが良いでしょう。

納得するためや、妥協させるための材料は少しでも多い方がいいです。

そしてプラスの財産をもらう人は、謙虚な姿勢が必要でしょう。

そもそも、ゼロがプラスになることなのですから。

当事者のすべての方の優しさが、不要な争いを防ぐエッセンスですね。

このコラムを読んで心配になってきた、という方はどうぞご相談ください。

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