みんなは知らない、生命保険会社と保険募集人の現実
先日、私が以前勤務していた生命保険会社のお客様から連絡がありました。
保険会社から一通の手紙が届いた、と。
その中身を見せてもらうと、私の後任の担当者が不正を働き退職をした旨の内容が書いてありました。
「あぁ、いまだに無くならないんだ…悲しいな保険業界って…」
というのが率直な感想。
顧客をだまして契約をさせてしまう。
絶対にあってはならないことです。
しかし私は長い間生命保険の募集人をやってきたので、なぜ一線を越えてまでそのような行為をしてしまうのか、その気持ちがわかります。
昔から絶えることなく発生してしまう不適切募集の背景には、生命保険会社の販売体制と、保険営業パーソンの報酬体系の仕組みが少なからず影響していると思います。
お客様にも決して無関係な話ではないので、少しその事情をお伝えしたいと思います。
会社員だけど実態は自営業者
保険営業パーソン(募集人)の報酬体系は、出来高制の要素が非常に強いです。
各会社によって違いはあるものの、基本給はあってもほんのわずか、またはゼロ。
お客様へ販売した量によって報酬(給料)が決まります。
その報酬の評価基準も各社違うのですが、基本的にはお客様から集めた保険料(掛け金)の多さによって決まります。
ですから、できるだけ掛け金の高い保険を販売したい、という思いが常に募集人にはあります。
そして報酬が受け取れるのは販売後の一定期間(数年間)だけで終わり、その期間を過ぎたらどれだけお客様が契約を継続してくれていても、報酬は発生しません。
つまり、ずっと売り続けないと生き残れない仕組みになっています。
また営業活動費は、すべて自腹。
営業車両の用意からガソリン代、電話代や接待交際費、事務所内のコピー代に至るまですべて自分で賄います。
ですから保険を売って収入がないと、そもそも営業活動ができないのです。
より多く、より長く
では保険会社はどのような販売管理が理想なのか?
それはたくさんの契約を集め、そして長く契約を続けてもらうこと。
「長く契約を続けてもらう」というのが大事なポイントで、長期間契約し続けてもらうことで利益が出せる収益構造になっています。
というのも、契約からの数年間は販売店や募集人に対し、販売手数料やボーナスの支払いがあるので、あまり多くの利益が出せません。
ですから短期間に解約があると困ります。
その対策として、一定期間内に解約があった場合は募集人にペナルティを与え、ボーナスを減らしたり、すでに支払った給料を返金させることで会社側のダメージを減らすようにしています。
募集人と会社側の思惑
このような事情があるので、募集人は
「高額な保険料の契約を販売して、報酬が発生している間は継続してもらい、その期間を過ぎたら解約させて新しい保険を販売する」
と、効率よく儲かり経営が成り立ちます。
しかしそんなことを許していたら会社側は利益が出せないから、そう簡単にはさせません。
報酬規定の中に、「解約から数か月以内に発生した新しい契約には報酬を出さない」と定めているのです。
すると募集人は知恵を働かせ、この規定を避けるために、解約はさせずに契約を残す払い済み保険にするとか、解約後しばらく無保険状態にさせておいてペナルティ期間を過ぎたら新しい契約を結ぶ、という自分都合での販売をするのです。
大きな社会問題になった、ゆうちょ銀行の不適切募集問題は、まさにこの仕組みを悪用したものでした。
顧客利益よりも自分の利益
こういった仕組みや事情が、どうお客様に影響をするのか?
それは“不必要、またはニーズに合わない保険を勧められる”ということが起きます。
運悪くレベルの低い募集人に当たってしまうと、初めから数年後に入れ替えさせる目的で、ベストではない保障プランに加入させられることもあります。
もちろん悪いのは募集人ですが、そうでもしないと業界に生き残れない報酬体系を続ける保険会社にも責任の一端はあると考えます。
離職したくないから、どんな手を使ってでも売り続ける。
そのおかげで会社側は生産性が上がる。
そこにお客様の利益はきちんと考えられているのか?
甚だ疑問です。
不正をなくし、顧客の利益を最優先に考えた保障を提供させるためには、顧客への貢献度に応じた報酬体系への見直しが必要だと私は考えています。
生命保険はすばらしい金融商品
このようなことをお伝えすると、まるで生命保険への加入を誹謗中傷しているように誤解を与えてしまいそうですが、生命保険はとても素晴らしい金融商品だと私は思っています。
特に相続対策に使うには、本当に優れた機能を持っています。
ほかのコラムでも述べましたが、生命保険は決められた相手に対し速やかに、かつ誰にも邪魔されることなく確実に約束されたお金が届けられます。
使うあてもなく銀行に貯金しているくらいなら、生命保険に変えたほうが絶対にいいです。
ただし、いつか必ず保険金を受け取れる終身保険や、それに近い保障内容に限りますが。
くれぐれもムダな医療保険への加入と、為替リスクについて理解できないような外貨建ての保険には注意して下さいね。
保険契約内容をベストにするには
では自分に合った理想的な保険を加入するためには、誰に相談をすればいいのか?
私は、独立系のファイナンシャルプランナーをオススメします。
生命保険会社出身だと、なおいいですね。
良い点も悪い点も教えてもらえます。
あるいは生命保険会社を離職して、現在はまったく保険と関係のない仕事に就いている人もいいですね。
もはや何のしがらみもないので、中立的な意見がもらえることでしょう。
あなたが全幅の信頼を寄せる保険営業パーソンがいるなら、もちろんその方でもいいです。
理屈ではなくその人を信用しているのですから、どんな結果にも疑念など生じないでしょうから。
ただ、飛び込み営業でやってくるセールスパーソンや、無料相談を売りにしている保険ショップは十分慎重に判断して下さい。
飛び込みでやって来るくらいですから売る気満々でしょうし、なぜいい大人が不特定多数を相手に無料で保険のことを教えてくれるのか、よく考えてみたら分かりますよね。
私は、お客様が抱える相続の悩みや問題解決の実行支援に対して報酬を頂戴し生計を立てていますので、最適な保険加入の考え方と、あまり募集人が言いたくない保険のやめ方についてまでお伝えすることができます。
もしも関心がおありでしたら、保険証券をご用意ください。
あなたにとってのベストな保険の契約形態がきっと見つかるでしょう。