
賃貸不動産会社の営業事情とアパート経営の気を付けるべき点
先日、義父が
「空いている土地にアパート建てませんか?と営業マンがやってきた。どうしようかなぁ。」
とつぶやいていました。
それを聞いて思い出したのが、以下の言葉。
「決まったら紹介料100万円あげるからさぁ、誰か紹介してくれない?」
もうしばらく前のことですが、実際に私が言われたこのセリフ。
相手は某大手賃貸不動産会社の営業マン。
その会社に転職する前から少し知ってはいたものの、ほとんど付き合いのない方でした。
私が輸入車販売会社と生命保険会社で営業職をやっていたので、きっと見込み客になりそうな知り合いが多いのでは?と思って連絡を下さったのでしょう。
しばらくぶりの電話で第一声が冒頭の言葉だったので、正直うさん臭い話だなと思いました。
しかし同じ営業マンとして、その会社がどんな営業手法を取っているのか大変興味があったので、前橋市内のファミリーレストランで待ち合わせをして、いろいろとお話を聞かせてもらいました。
顧客利益不在の営業手法
簡単にお互いの近況報告を済ませた後、
いま毎日どんな営業活動をしているんですか?
と聞いてみました。
すると、けっこう詳しく教えてくれたのです。
毎朝ミーティングを終えると1台のクルマに複数人で乗り込み、その日に攻めるエリアへと向かいます。
到着したら一斉にクルマから降りて、徒歩で手当たり次第に飛び込み営業をするそうです。
「アパートを建てると相続税が安くなりますよ」
「家賃収入がずーっと続きますよ」
「一括借り上げで家賃保証があるから安心ですよ」
とアプローチをして、空いている土地を持っているかアパート経営に興味があるかを尋ねて回ります。
午後は個人行動で営業活動、興味を示した人に再訪問をしてセールスを仕掛けます。
そして建築費がどれくらいになるかの見積もりをさせてもらう同意書を、なんとかして取り付ける。
その後は猛烈アタックでクロージング、上司や支店長を同行させ昼夜問わず訪問し、見込み客が首を縦に振るまで何度もアタックしまくるんだそうです。
見込み客の大半は高齢者。
細かい話をしても分かってもらえないから表面的な利点だけお伝えしておくのがポイント、建築後の苦情があったとしても、どうせ契約した本人はすぐに亡くなるし、子供たちからの苦情に対しては契約時にちゃんと話をしてあったと言えばどうにでもなる。
と笑いながら話をする彼。
なんとか作り笑いでその場は取り繕いましたが、こんな奴へ絶対に紹介なんかするもんか!と強く心に誓いました。
あなたは、この営業マンから契約をしますか?
CM
のイメージとは程遠い世界
テレビCMではさわやかな雰囲気のタレントや紳士的なイメージの俳優を使って宣伝をしていますが、実際の営業現場は過酷なノルマに追われるとても厳しい世界です。
離職率も高く、3年もいればベテランの域だそうです。
頑張り次第では年収1000万円も決して夢ではないので、人の出入りが激しい業界でもあります。
先に登場した私の知人が、いまもその会社に在籍しているかは知りません。
しかしあのような営業スタイルで契約をしてしまったお客様は何人もいる、という事実があります。
運よくアパート経営が順調に回り、「建ててよかった」と感じている人が存在することを願わずにはいられません。
顧客の利益より会社の利益
世の中に存在するすべての企業は営利事業なので、当然利益を出す努力を常に追求をしていきます。
利益が出ることはとても素晴らしいことです。
雇用を産み出し、社員とその家族が経済的に潤い、税金として社会に還元されることで国や自治体の成長につながります。
しかし、利益の出し方が顧客不在になってはいけません。
賃貸不動産会社だけを責めるつもりなどまったくありませんが、私はどうしても顧客本位の営業方針に感じられないのです。
うまい話を疑え
ほかのコラムでも述べましたが賃貸アパートを建てるということは「不動産賃貸業を営む」ということです。
いわば自営業で商売を始めるようなもの。
あなたの持っている土地は「そこに住みたい!」って思う人が継続的に現れ続けるエリアでしょうか?
先に述べた営業手法でも分かる通り、営業マンはアパート経営に適したエリアだけ訪問しているのではありません。
単純に、どこでもいいからアパートを建ててくれる人を探しているのです。
気になるのは入居者が継続して入るのか。
その点はサブリース会社が行う○○年一括借り上げがあるので大丈夫、と。
しかし冷静に考えればわかることですが、数十年先の家賃を保証できると思いますか?
契約書の隅に小さな文字で書いてあります。
○年毎に家賃の見直しをします、と。
それからリフォームに関しても、その会社のグループ会社が行います。
その費用に関しても言いなりです。
たとえ自分の知り合いにリフォーム業者がいて安価で修繕ができるとしても、そこを使うことはできません。
契約前に渡される事業収支計画書も、甘い見立てになっていることがほとんどです。
契約当初の家賃がずっと続く、ローン金利が低めに計算されている、修繕費用が計上されていない、など。
そしてその後も、近所に同じ会社の同じような物件が建っていきます。
市場のニーズによってではなく、建てる人さえ見つかれば増えていくのですから。
過度に相続税を恐れない
首都圏と違って、群馬県の地価は低いです。
過度なまでに相続税に対して臆病になりすぎる必要はありません。
よくわからないまま営業マンの言う「相続税が安くなりますよ!」を鵜呑みにしてしまい、不動産が「負」動産にならないように気を付けましょう。
有料ですが、いま勧められている賃貸不動産の購入が適正なのか診断をしてくれる専門家が知り合いにいます。
必要があればお繋ぎすることも可能ですので、どうぞおっしゃってください。