
相続対策に賃貸不動産経営はホントに最適?
私の親戚に、賃貸マンション経営をしている人がいます。
私が小学生の頃、その親戚の家に遊びに行ったときのこと、
父と伯父の会話の中で伯父が言っていたセリフを不思議と今も覚えています。
「しばらく前に家賃を下げたから、家主から賃料の回収が大変になってしまったんだ」
???
まるでマンガのように、頭の中にいくつものクエスチョンマークが湧いてきました。
「家賃が高いほうが住んでる人は支払いが大変なんじゃないの?だからそっちの方が集金するのは大変なんじゃないの?」
安い=買いやすい、高い=買いにくい
というのが、私の中での常識だったからです。
「どうして大変になったの?逆に楽になるんじゃないの?」と、その会話に首をつっこんで伯父に質問しました。
伯父は子どもの私に対して、言葉を選びながらこう言いました。
「安い家賃なら支払える、という人しか入居しなくなったんだよ」と。
大人になった今ならわかります。
もっと雑に言い換えれば、賃料が高いマンションには高額所得者が入居して、賃料が安いアパートには低所得層が入居するから。
伯父は「家賃を滞納され続け、そのまま集金ができずに退去をしていった住人がいた」とも言っていました。
「マンション経営は建ててさえしまえば、何にもせずにお金が入ってきていい商売だなあ」
なんて思っていたので、それまでの認識をひっくり返された懐かしい思い出です。
ホントにオススメなの?
「相続対策には賃貸不動産経営がおすすめです」
と、いろいろなハウスメーカーが有名タレントを使って宣伝しています。
相続対策の定番、とも言えるかもしれません。
賃貸不動産経営のメリットとデメリット。
本当のところは、どうなんでしょうね?
長所① 相続税額が少なくなる
「相続税が安くなるうえに、安定収入がずっと続きます」
というキャッチコピーをよく見聞きします。
確かに、その通りです。
相続税という税金は、ある一定の金額を超える資産を相続する人(引き継ぐ人)が支払うルールになっています。
だから持っている資産の価値を引き下げられれば、支払う税金は減ります。
ここでは詳しく述べませんが、実は現金という資産を不動産に変えることで、価値を引き下げることができるのです。
というのも、土地を相続する際の税金の計算は、国税庁が毎年7月1日に発表する路線価方式(または倍率方式)という、実勢価格よりも2割くらい低い評価額を基準にしているからなんです。
なぜかと言うと、土地の値段っていつも一定じゃなくて、その価値は需要によって上がったり下がったりしますよね。
でも税金の計算をする際の基準となるものが、実際に取引されている価格よりも高くなってしまったら困ります。
「うちの土地はそんなに高くないぞ!税金を取りすぎじゃないのか!」
という苦情がいくつも税務署に届いてしまうかもしれませんから。
なのでそんなことにならないよう余裕幅を持たせて、実際の売買価格を下回るようになっているのです。
これが、現金で持っているよりも土地を買って財産の種類を変えた方が、税金が少なくなるという理由です。
なお、相続税の額を求める計算式は、
プラス価値の財産-負債-基礎控除額-葬儀費用=課税遺産額
課税遺産額×遺産額に応じた税率=相続税額
となります。
ですから、その土地にアパートやマンションを借金(負債)して建てれば、マイナスする額が大きくなって税金が安くなる、という仕組みです。
長所② 賃料が毎月入ってくる
そしてアパートが完成すれば、入居者からの家賃収入が毎月入ってきます。
自分が働かなくても不動産が稼いでくれるので、もしも勤務先が倒産したとか、体調を崩して働くことができなくなった、なんて事情があったとしても安定して収入があります。
給料以外に、二つ目の収入源ができて安心ですね。
アパートマンション経営の注意点
キャッチコピーの通り「税金は安くなるは、賃料収入が続くは」で良いことずくめ。
まるでメリットばかりのようですが、デメリットもちゃんとありますので注意が必要です。
「アパートマンション経営」と言うくらいですから、建設が完了したら経営者になります。
もっと言えば、建設すると決めた時点から経営者です。
どこに建てればお客さんは入居してくれるのか
どうすれば入居し続けてくれるのか
共有部分の掃除など日常の管理
古くなった際の改修工事や、物件の魅力を増すためのリフォーム
防犯対策
住人のトラブル対応
など、いくつもするべきことが待っています。
重ねて言いますが、「経営者になる」ということです。
その覚悟や適性があるのか?
建てる本人はそれをできるとしても、それをきちんと引き継げる人はいるのでしょうか?
またその人に適性とやる気があるのか、も大切なポイントです。
すべての管理をしてくれる会社もありますが、そこに依頼をすれば当然費用がかかります。
収支バランスは成り立つのか、その見極めがとても大事ですね。
建ててからしばらく経つと
一般的には古くなってくると物件の魅力が下がり、入居率は悪くなります。
魅力を持たせるために、ほとんどの物件が賃料を下げます。
すると先ほども述べましたが、建築当初にイメージしていたのとは違うタイプの住人も入居してきます。
必ずではありませんが、入居者の質が下がります。
私の知り合いが持つアパートには、なんと3年間も家賃を滞納して居座り続け退去をしない住人がいます。
何度かお見受けしましたが、その方の駐車場にはフロントガラス以外のすべての窓に真っ黒いフィルムが貼ってある、黒くて大きなセダンがいつも停まっています。
経営がうまくいかず売却をしたくても、魅力が少ない物件は簡単に売れません。
買い手から足元を見られ、未払いのローン残高よりも安い金額で売却をして、毎月の返済だけが残ってしまう。
もしもそんなことになったら、何のために対策をしたのか分かりませんね。
都会と地方の違い
都心の駅前物件でしたら安定して人気があるのかもしれませんが、群馬県内でいつも満室状態で入居者が途絶えないような立地条件は限られていると思います。
人口が増え続ける都会と、人口が減り続ける地方都市では事情が違います。
大学や大手企業、官公庁の近くで安定して入居者が見込める、とか。
または、特定の事柄に限定した入居者だけを募集する、など。
どの場所でどのように運営していけば客がついて収入が継続するのか、経営者としての目線が求められることは間違いないです。
家賃保証のカラクリ
賃貸不動産経営のリスクや不安を解消してくれる「サブリース会社」という不動産管理会社があります。
契約をするとオーナーから建物を一括で借り上げてくれるので、何もせず自動的に賃料が入ってくるようになります。
しかしサブリース会社の言う「家賃保証」という言葉には注意が必要です。
それはあくまで「入居保証」であって、当初の家賃がずっと継続してもらえるものではありません。
築年数が古くなってくると、減額された賃料しか入ってきません。
よく考えれば当たり前のことですよね。
サブリース会社だって経費をかけて営利事業として運営しているのですから、すべての物件に対していつまでも高い賃料を払い続けていけるわけがありません。
いいことばかり言うようなハウスメーカーやサブリース会社には、充分と注意をして下さいね。
節税目的だけは危険
ハウスメーカーは、大きな物件を建ててもらうことで儲けます。
銀行は、たくさん借金をしてもらうことで儲けています。
儲けることは納税の原資となって社会に役立つので、とてもいいことだと私は思っています。
ただそれが、顧客のメリットを無視するようであっては、絶対にいけません。
ですので、賃貸不動産物件の建設を検討するのなら、メリットばかりだけではなく、デメリットもきちんと教えてくれる会社や営業マンからにしましょう。
また「相続税を減らすためだけ」を目的にして賃貸不動産物件を建てようとしているのでしたら、私は強く反対をします。
そのあとのリスクが大きすぎる、と考えているからです。
まさに「木を見て森を見ず」。
相続については、鳥の目線で俯瞰するイメージを持ちたいものです。
私は全体を見渡すための翼を差し上げることで、儲けさせて頂いております。
一緒に鳥の目線で眺めてみたい方は、どうぞお気軽にご相談を下さい。