
生命保険選びでの大切なこと
生命保険会社へ勤務していたときに、よくお客様から頂いたこの質問。
「入院して保険金の請求をしたら、掛け金が高くなっちゃいますか?」
答えは、「そのまま変わりません。」
生命保険を扱う人からすれば当たり前のことですが、一般的なお客様はそれくらい「知らない」のです。
さらに言えば、
入院して受け取れるのは「給付金」、
「保険金」は死亡や高度障害となったときに受け取れるお金、
正しくは掛け金ではなく「保険料」。
でも、言い間違えて当然です。
普段から使うことのない商品、なのですから。
加入経路の大きな変化
ここ数年で、生命保険の販売チャネルが大きく変化してきました。
インターネットで加入するお客様がとても増えたのです。
ひと昔前は、「保険のおばちゃん」から加入するのが当たり前だったのに。
それこそ某大手国内生保会社は、毎日のように「○○のおばちゃん今日もまた~♪」とテレビCMで宣伝していたものです。
いまやスマホでかんたんに見積もり、申し込み手続きまでできちゃいます。
便利な世の中になりましたね。
ネット保険のメリット
こういった手続きができる会社は、ネット保険と呼ばれています。
ネット保険にはメリットがいくつかあります。
まず保険料が安い、です。
営業所を持たないことにより、人件費や事務コストが抑えられるので、その分お客様の保険料を下げられるのです。
そして、営業マンからセールスされるわずらわしさがありません。
自分の好きな時間に、好きなだけ時間をかけて比較検討もできます。
EメールやLINEの普及によって、電話も含め、人と話すこと自体がイヤ、という人がとても増えているそうです。
そういった人にとっては、安心して選べてとてもいいですよね。
ネット保険のデメリット
ではなにか短所はあるのでしょうか?
長い間、生命保険に携わってきた私が心配していること。
それは、「使い方がわからない」という点です。
冒頭で述べた通り、普通のお客様は「保険金」と「保険料」の違いですら分からない方がほとんどです。
保険会社の基本姿勢は、「お客様からの請求を受けてから支払いをする」というもの。
ひと頃、保険会社の保険金および給付金の不払いが社会問題となり、お客様へ支払い漏れがないかを積極的に案内していた時期もありましたが、それでもお客様からの請求がなければ支払いようがありません。
一般的に、多くの方は高齢になってから亡くなります。
高齢者がインターネットを駆使して、きちんと保険金の請求ができるのでしょうか?
ホントは支払いの対象だったのに、知らないがゆえに請求をせずに受け取れずじまい。
こうなってしまったら、結局のところ保険料が安くなったのか分からないですね。
知られていない、請求の時効期間
私は、過去にこんな方と出逢ったことがあります。
その方は、ある事柄を理由に片眼の視力を失っていました。
名刺交換をして私が保険会社の者だと分かると、片眼を失ったエピソードなどを教えてくれました。
その話の中で、入院と手術をした際に、自身が加入している生命保険会社から多額の給付金を受け取れて、それはとてもありがたかった、とおっしゃっていました。
「では、その保険の掛け金はもう止まってますよね?」
と私が確認をすると、
「それはなんのことだ。」
と。
生命保険はある一定条件の身体障害状態になると保険料の払い込みは免除になる、と約款に定められています。
片眼の失明はそれに該当します。
「後日、保険会社に問い合わせてみて下さい」と伝え、その日は別れました。
しかし残念ながら、その方の払い込み免除は認められませんでした。
なぜなら、すでに請求の時効を迎えていたからでした。
これも約款に記載されています。
「保険金等の支払いまたは保険料の払込免除を請求する権利は3年間、これを行使しなかったときは、時効により消滅します」
と。
すでに失明した事由から、3年以上が経過していたのです。
おかげで、本来であれば今後何十年間も払う必要のない保険料を、その方は払い続けることになってしまったのです。
知らないということは、こういうことです。
入口より出口
そのほかにも、生命保険は様々な使い方ができます。
受け取り方法によっては、もらえる金額に大きな差が付きます。
例えば、保険金を一括ではなく、年金のように分割で受け取ると受取総額が増える、とか。
目先の保険料の安さも大事ですが、使い勝手がどれだけいいかを優先して検討すべき。
だと私は考えます。
保険選びは、入り口よりも出口が大切です。
どの保険会社がいいかを選ぶより、どこのどういった販売チャネルで、誰から加入するのがいいのかを、検討材料のひとつにぜひ入れてみて下さい。
保険のことでも心配や不安があるようでしたら、どんなことでもお答えします。
どうぞご相談ください。